最近密かに話題になっている「折り畳みスマートフォン」ですが、正直あまりピンときていない方も多いのではないでしょうか。この機種には「電子ペーパー」の技術が使われています。
実際には、折り畳めることによるメリットはそれほど多くなく、価格も同機能のスマートフォンに比べて高いこともあり、流行しないのも無理はありません。加えて電子ペーパーの技術もまだまだ発展途上のため、スマートフォンへは実験的な意味合いも含まれていると思われます。
こちらの記事では、電子ペーパーの技術の応用や今後の課題についての調査結果のまとめと考察をしています。よろしければ最後まで読んでいただけたら幸いです。
ディスプレイは高画質化とフレキシブル化の2方面で成長する
「ディスプレイ」や「電子ペーパー」のテクノロジーについて検索していると、博報堂生活総合研究所というサイトが出てきました。そこにまとめられている内容からわかったことは、ディスプレイのテクノロジーは今後さらに発展していくということです。
また、大きく2つの方面で成長していくことがわかります。それは、高画質化とフレキシブル化です。第一章では本題に入る前に、ディスプレイ市場の流れについてまとめておきたいと思います。
※参考サイト:デジタル家電の未来
<2021年>国内の8Kテレビ市場が18万台になる
4Kの後を追う形で8Kも徐々に市場を伸ばしていますが、世界では280万台の規模に成長していくとのこと。ただし、コンテンツが十分でないことや、一般家庭には手を出しにくい価格であるという現状課題はありそうです。
<2021年>世界の有機EL市場が463億ドルになる
有機ELは液晶と異なり、画面の構成要素が自ら発光するのでバックライトを有しません。そのため、液晶ではどうしても白っぽくなってしまう「黒色」を綺麗に表現できるのが魅力となっています。液晶にも「明るさ」という武器があるため、世界的にはまだ併存していくことになると思われますが、有機ELは5年で3倍にスケールアップすることになるようです。
<2023年>4Kテレビ市場が国内で386万台に減少
2014年6月に試験放送が始まってから、2020年に407万台まで市場を成長させた4Kでしたが、8Kの成長に伴って2023年には減少となるそうです。
<2025年>フレキシブルディスプレイ向け有機ELパネルが実用化
こちらが「電子ペーパー」のことを指します。当年表では2025年としていますが、2013年から既に各社スマートフォンで搭載されてきています。液晶に変わり有機ELディスプレイはますます供給が高まる見込みです。
電子ペーパーの現在の活用例
それでは本題に入ります。本章では電子ペーパの活用例を見ていきましょう。
電子ペーパー端末
2013年に台湾のE Inkという会社から発表され、同時に日本のソニーからも類似の製品が登場しています。この時は、どちらもiPadのような形状をしていながら単機能(Kindleをイメージしていただくといいかもしれません。)なためターゲットはかなり限定的ですが、読み書き専用のバッテリー長持ち仕様で紙に近い書き心地が魅力となっています。
折り曲げ可能な電子ペーパー端末
2013年に電子ペーパー端末を発表したE Ink社が同じ年に、新技術として”折り曲げ可能な電子ペーパー”を発表しました。その後、この技術を応用した電子端末が次々と発表されることとなりました。
例えば、2019年にはSamsung Electronicsに続いてHuawei、シャープ、そして2021年にはAppleと、各社が折り畳み式のスマートデバイスを次々と発表しています。
なお、レノボからは、ThinkPad X1 Foldが2020年10月に”世界初の画面折り畳み式PC”として発売されました。
スニーカー
2015年にNYで誕生した「ShiftWear」は知っている人も多いのではないでしょうか。実は2018年に日本でも、ソニーとニューバランスがコラボして開発されていましたが、販売はされていません。
2013年にはすでに発表されていた電子ペーパーの技術も、それまで認知拡大には今ひとつでした。しかし、スニーカーとしてファッションに応用されたことでこの技術は一気に認知され、多くの人の「デジタルディスプレイは固く、平である」という概念が覆されたことで一躍話題となりました。
電子ペーパーの今後の活用例
電子ペーパーはスニーカーに留まらず、さまざまな応用がされていくでしょう。この章では今後広がるであろう活用例について見ていきたいと思います。
家の壁紙
家庭内でのニーズが認められれば、市場は一気に広がるのではないでしょうか。実際に1章でご紹介したE Inkはホームページでも建築への応用について触れています。24時間365日、気分に合わせて壁紙を変えることができれば、インテリア好きの方であれば満足度は一気に上昇しますし、リモート会議や動画撮影に必要なグリーンバックの背景も手軽に設定できます。
広告看板
デパートやショッピングモールではすでに活用されているところもありますが、形状を自在に変容させることで、従来までの広告と比べてアイキャッチ効果を格段に上げることができます。
教科書、ノート
学校で使われる教科書やノートが電子ペーパーに置き換われば、先程の壁紙同様に市場拡大のペースは上がると予想できます。ただし、ここで懸念されるのが学習効果の向上に影響するのかという点です。少しでも学習効果に悪い影響があればその導入コストと機会損失は計り知れません。
そもそもIT化が遅れている日本の学校でいきなり電子ペーパーが使用されることは考えにくく、まずは教育制度や体制を見直す必要がありそうです。
電子ペーパーの課題
そもそも電子ペーパーが我々に与えるメリットはなんでしょうか?それは、紙媒体であることによる資源浪費(紙、インク、配送エネルギー)や保管スペースの軽減。それから、デジタル化です。
残念ながら、これまでの紙の課題を解決するだけではあまり普及しないでしょう。最後に本章で、電子ペーパーの普及に必要な解決課題を見ていきましょう。
価格
E Inkの電子ペーパーを搭載した、富士通から出ている「QUADERNO」(クアデルノ)という端末では一番安いモデルで39,800円とPC一台買える値段となっていました。ノート1冊を100円で買えるとすると、新しい物好きでない限り、すぐに手が出せる商品ではないと思います。
ECサイトのレビューを拝見してみても、まだまだ改善の余地がありそうですので、アップデートや価格については今後の動向が気になるところです。
耐久性
こちらは価格とも関係しますが、紙と電子ペーパーの消費スピードを比較した時にまだまだ紙のメリットが上回ってしまうのではと思います。端末や周辺機器を合わせた耐久性は用途にもよりますが、落下や故障、水没による損失は今時点でかなりのダメージになると考えられます。
習慣化
電子ペーパ端末の売りのひとつでもある「書き心地」は、専用のペンの先端が消耗する作りになっており、鉛筆やシャーペンに近い感覚を再現できます。しかしこれは、ノートをデジタル化するためには本来必要のない要素です。
確かに、私たち人間が長い間習慣としてきた鉛筆に近い感覚を持たせることは、普及させるためには必要なのかもしれません。とはいえ、筆から鉛筆に、鉛筆からシャーペンに慣れていったように、この要素もいずれ重要ではないと判断させることになるでしょう。
iPadを例にすると、画面はツルツルしていて初めは慣れるのに苦労します。しかし、iPadにはそれを上回る充実した機能が備わっており、ユーザーの考えから使わないという選択肢がなくなっていくのです。
もちろん電子ペーパー端末がiPadのような高機能製品になっていけば、真っ向競合することになり現実的ではありません。電子ペーパーは電子ペーパーにこそ相応しい、”ユーザーが使わざるを得ない強み”を身につけ、訴求していくことで普及スピードをあげていくことになるでしょう。
まとめ
電子ペーパーの応用と課題についてご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか?
となりの電器屋さんでは、最新のテクノロジーや家電に関するお悩み事をサクッとズバッと解決できるよう、読みやすさにこだわった記事をお届けしていきます。
お困りのことがあれば是非いらしてくださいね。またどこかでお役に立てればとてもうれしく思います。
それでは!